米国 TSCA | 新規化学物質届出制度

米国で新規化学物質を製造もしくは輸入をする際には,TSCA (有害物質規制法: Toxic Substances Control Act)に基づき,新規化学物質届出をしなければならない.届出制度の概要を以下に説明する.

* TSCAにおいて,製造は輸入も意味する.

  • 所管当局
    • EPA (米国環境保護庁: Environmental Protection Agency)
  • 届出者 (§720.22 (法規②))
    • 米国で商業目的で新規化学物質を製造(輸入)しようとする者
  • 届出物質
    • 対象物質 (§720.22 (法規②))
      • 新規化学物質 (TSCAインベントリーに収載されていない物質)
        新規化学物質は届出の対象物質であるので,次項の届出種類に基づき対応しなければならない.

    • 対象外物質(§720.30 (法規②))
      新規化学物質だとしても,以下項目は届出の対象外となる.

      • 化学物質ではない物質
      • 混合物(混合物自体は届出の対象外だが,混合物に含まれる個々の物質は届出の対象になりうる)
      • §720.36に基づく営利目的の研究開発(営利R&D)向け新規化学物質
      • §720.38に基づくテストマーケティング向け新規化学物質
      • 輸出専用新規化学物質
      • 燃料物,もしくは廃棄,または成分物質を抽出する副産物
      • 以下化学物質
        • 不純物
        • 商業目的で使用されない副産物
        • 環境要因や暴露に付随した化学反応から生じる化学物質
        • 保管または廃棄に付随した化学反応から生じる化学物質
        • 最終使用時に発生した化学反応から生じる化学物質であり,商業としての流通または中間体としての使用のために製造された化学物質ではない.
        • 使用時に発生する化学反応から生じる化学物質
        • 安定剤や着色剤などが意図した通りに機能,もしくは,特定の生理化学的特性を付与することを意図した化学物質が機能するときに発生する化学反応から生じる化学物質
        • 単離されていない中間体
      • 非営利目的の研究開発(非営利R&D)向け新規化学物質
  • 届出種類 (TSCA section 5 (法規①), §720.40 (法規②))
    新規化学物質は製造前に,以下項目に基づき届出をしなければならない.

    • 通常届出
      PMN (製造前届出: Pre-manufacture notification)
      数量の制限は特にない.届出後,NOC(Notice of Commencement; 初回輸入届出)を提出すると,TSCAインベントリーに収載される.

    • 免除届出 (§723.50, §723.175, §723.250 (法規③))
      PMNは免除されるが,免除届出はしなければならない.

      • TME (テストマーケティング免除: Test Marketing Exemptions, §720.38)
        テストマーケティング用の新規化学物質が免除届出の対象となる.
      • LVE (少量免除: Low Volume Exemption, §723.50)
        年間10,000kg以下まで製造可能となる.製造の30日前には提出しなければならない.
      • LoREX (環境への放出が少なく,人への暴露が少ない化学物質: Low environmental releases and human exposures, §723.50)
        環境への放出が少なく,人への暴露が少ない化学物質が免除届出の対象となる.製造の30日前には提出しなければならない.
      • Film article exemption (インスタント写真および剥離フィルム製品の製造または加工に使用される化学物質: Chemical substances used in or for the manufacture or processing of instant photographic and peel-apart film articles, §723.175)
        インスタント写真および剥離フィルム製品の製造または加工に使用される化学物質が免除届出の対象となる.

    • 届出除外
      PMNは免除され,免除届出も不要.ただし,輸入後の管理などが必要となる.

      • 営利R&D (R&D exemption, §720.36 (法規②))
      • ポリマー (Polymers, §723.250 (法規③))
  • 届出期間
    • 通常届出
      PMN:製造の90日前には提出しなければならない.

    • 免除届出
      • TME:製造の45日前には提出しなければならない.
      • LVE:製造の30日前には提出しなければならない.
      • LoREX:製造の30日前には提出しなければならない.
      • Film article exemption:製造時に提出しなければならない.

    • 届出除外
      ポリマー:製造前に提出は不要.ただし,最初の製造後,翌年1/31までにポリマー免除レポートを提出しなければならない.
  • 必要情報
    • PMN (§720.45, §720.50 (法規②))
      • 化学的同一性情報 (CA名称; Chemical Abstracts Name, CAS RN; CAS Registry Number, 分子式, 化学構造式)
      • ポリマーの場合,以下情報
        • モノマーおよび反応物の化学物質名称 (2wt%以下の場合も同様)
        • モノマーおよび反応物のwt%,およびモノマーの最大残留量
        • ポリマーの数平均分子量および500未満および1000未満の低分子量の測定値
      • 不純物
      • 新規化学物質の商品名
      • 新規化学物質の製造,加工,使用および廃棄に起因する副産物
      • 最初の年の推定製造最大量および最初の3年間の任意の12ヵ月の推定製造最大量
      • 用途カテゴリーの説明,および各用途カテゴリーでの推定生産量,商業的製剤もしくは消費者用途での新規化学物質の%
      • 届出者が管理するサイトでの情報
        • 新規化学物質の製造,加工,または使用サイト
        • 新規化学物質の製造,加工,または使用オペレーションのプロセスの説明,および新規化学物質の排出ポイント
        • 従業員活動や従業員が暴露しうる新規化学物質の性状(液体,気体,粉体など),従業員数,保護具などを含む,従業員暴露情報
        • 排出量や性状,使用されている技術管理を含む新規化学物質の環境排出情報
      • 届出者が所有または管理する新規化学物質に関する試験データ
      • 届出者が既知または合理的に確認できる新規化学物質の人健康および環境影響関連データ

    • LVE, LoREX (§723.50 (e) (2) (法規③))
      • 製造者のアイデンティティ
      • 化学的同一性情報 (CA名称; Chemical Abstracts Name, CAS RN; CAS Registry Number, 分子式,化学構造式)
      • 不純物
      • 新規化学物質の商品名
      • 新規化学物質の製造,加工,使用および廃棄に起因する副産物
      • 最初の年の推定製造最大量および最初の3年間の任意の12ヵ月の推定製造最大量
      • 用途カテゴリーの説明,および各用途カテゴリーでの推定生産量,商業的製剤もしくは消費者用途での新規化学物質の%
      • 届出者が管理するサイトでの情報
        • 新規化学物質の製造,加工,または使用サイト
        • 新規化学物質の製造,加工,または使用オペレーションのプロセスの説明,および新規化学物質の排出ポイント
        • 従業員活動や従業員が暴露しうる新規化学物質の性状(液体,気体,粉体など),従業員数,保護具などを含む,従業員暴露情報
        • 排出量や性状,使用されている技術管理を含む新規化学物質の環境排出情報
      • 届出のタイプ
      • 届出者が所有または管理する新規化学物質に関する試験データ
      • 届出者が既知または合理的に確認できる新規化学物質の人健康および環境影響関連データ
      • 届出を満たす証明
      • サニタイズされた届出(秘密情報を隠した届出)のコピー

    • TME (§720.38 (法規②))
      • 化学物質安全性データ(物理的データ,人健康毒性データ,環境毒性データ),もしくは構造活性相関データおよび化学物質類似物質のデータ
      • 製造の最大量
      • 化学物質を提供する最大人数
      • 化学物質に暴露しうる最大人数
      • テストマーケティング活動の詳細.期間など.
      • 料金支払い番号

    • ポリマー (Polymers, §723.250 (法規③))
      製造前の届出は不要.ただし,最初の製造後,翌年1/31までにポリマー免除レポートを提出しなければならない.その際に必要な情報は以下になる.

      • 製造者名 (製造者の名前,住所,技術担当者の名前,電話番号)
      • 製造されたポリマーの数
  • 審査後の対応・管理 (§720.78, §720.102 (法規②), §723.50 (法規③))
    • PMN
      • NOC (初回輸入届出: Notice of Commencement, §720.102)
        PMNに基づく最初の製造後,30日以内にEPAにNOCを提出しなければならない.その際に以下情報が必要となる.
        • 化学的同一性情報
        • 化学物質総称名 (化学物質情報が非開示の場合)
        • PMN番号
        • 製造開始日
        • 届出者の名前と住所
        • 責任者名
        • テクニカルコンタクトの名前と電話番号 (任命している場合)
        • 製造場所の住所
        • CBI有無

      • 管理 (§720.78 (a))
        以下情報を,製造開始日から5年間当該情報を保管しなければならない
        • 製造の最初の3年間の数量
        • 製造開始日
        • 当該情報の書類

    • 営利R&D (§720.78 (b))
      以下情報は,作成後5年間保持しなければならない.
      • 健康への潜在的なリスクのレビューおよび評価された情報のコピーまたは引用
      • 通知の種類と方法を文書化
      • 実験室の手順の文書化
      • 製造者以外の化学物質の行き先 (社名,住所,物質の名前,数量)
      • 化学物質の数量,廃棄情報 (年間100kgを超える場合)

    • TME (§720.78 (c))
      以下情報は,最後の製造後,5年間保持しなければならない.
      • 申請書類
      • EPAによって示された制限情報

    • LVE, LoREX (§723.50 (n))
      新規化学物質の製造者は,製造場所(または輸入サイト)で以下記録を製造後5年間保管する必要がある.
      • 年間の製造量
      • 要件や制限を遵守した記録

    • Film article exemption (§723.175 (j))
      新規化学物質の製造者は,最後の製造から30年間以下記録を保管する必要がある.
      • 年間の製造量.開始日も含めること.
      • 暴露モニタリング情報.最低でも以下情報を含める.
        • 新規化学物質情報
        • モニタリングの日付
        • モニタリング場所のデータ
        • 収集や分析技術の詳細
      • 訓練および暴露記録.従業員に対する訓練の参加記録
      • 排水の処理記録

    • ポリマー (Polymers, §723.250)
      ポリマーの製造者(輸入者含む)は,製造から5年間以下情報を保管しなければならない.
      • 合理的に確認できる範囲で,化学的アイデンティティ情報の確認
        • 化学物質名およびCAS番号
        • 代表的な構造図
      • ポリマーが免除を遵守していることを示す情報
      • 最初の3年間の製造量の記録と製造開始日
      • ポリマー免除のどの基準を満たすかを示す情報
      • 数平均分子量がポリマー免除基準を満たすことを示すデータ (GPC dataなど)
      • 低分子の基準がポリマー免除基準を満たすことを示すデータ (GPC dataなど)
      • 可能であれば,化学的アイデンティティを示す分析データもしくは理論的計算
      • ステートメント(ポリマー免除遵守を示す)の作成

以上

EU CLP | ポイズンセンター:危険な混合物を知らせる準備をする

2018/11/7

2018/12/11 11:00~12:00 ヘルシンキ時間
このオンラインの情報セッションでは,ポイズンセンターへの通知準備のための最新情報を提供します.通知を作成・提出するためにステップバイステップで行うべきことを説明し,質問をする機会も与えます.

ECHA Weekly (2018/11/7) | Register

EU REACH | 最新の登録を維持

2018/11/6

REACH下での化学物質の登録は,一回限りのものではありません.物質についての新しいことがわかると,状況が変わる可能性があります. これはあなたの登録に反映されなければなりません. したがって,定期的にドシエをレビューし,新しい情報を入手するとき,更新する必要があります.これは法的要件です.

ECHA Weekly (2018/11/6) | News | Animation

EU CLP | アントラキノン(anthraquinone)の分類に関する裁判所判決

2018/10/31

10月24日,EUの一般裁判所は、アントラキノン(EC 201-549-0; CAS 84-65-1)の発がん性のカテゴリー1Bの分類に関する欧州委員会の決定に挑むために,DEZA, a.s.に持ち込まれた訴訟について,欧州委員会とECHAを支持する判決を下した.その判決において,裁判所は,DEZA, a.s.にもたらされた訴訟を全面的に棄却した.

裁判所は,欧州委員会とECHAのリスク評価委員会が,物質が発がん性のカテゴリー1Bの分類基準を満たしていることを誤って評価していないと判断した.

News Weekly (2018/10/31) | Judgment (currently only available in French and Czech)

EU CLP | 調和分類と表示に関するパブリックコンサルテーション(公開協議)

2018/10/31

ECHAは,以下の調和分類と表示提案に関するコメントを期待している:

Emamectin benzoate (ISO); (4’’R)-4’’-deoxy-4’’-(methylamino)avermectin B1 benzoate (EC -; CAS 155569-91-8). It has no harmonised classification and labelling in Annex VI to CLP. Comments are invited on selected physical hazards as well as hazards on human health and the environment except respiratory sensitisation, aspiration and hazardous to the ozone layer.

Trinexapac-ethyl (ISO); ethyl 4-[cyclopropyl(hydroxy)methylene]-3,5-dioxocyclohexanecarboxylate; ethyl (1RS, 4EZ)-4-[cyclopropyl(hydroxy)methylene]-3,5-dioxocyclohexanecarboxylate (EC -; CAS 95266-40-3). It has no harmonised classification and labelling in Annex VI to CLP. Comments are invited on selected physical hazards as well as all human health hazards and hazards to the aquatic environment except respiratory sensitisation, aspiration and hazardous to the ozone layer.

[S-(Z,E)]-5-(1-hydroxy-2,6,6-trimethyl-4-oxocyclohex-2-en-1-yl)-3-methylpenta-2,4-dienoic acid; S-abscisic acid (EC 244-319-5; CAS 21293-29-8). It has no existing harmonised classification and labelling in Annex VI to CLP. Comments are invited on selected physical hazards as well as on human health hazards and hazards to the aquatic environment except carcinogenicity, respiratory sensitisation, aspiration and hazardous to the ozone layer.

コメントの締切日は,ヘルシンキ時間の2019年1月11日の23時59分です.

ECHA Weekly (2018/10/31) | Give comments

 

EU CLP | 分類とラベルを調和するための新たな提案と意向

2018/10/24

polyhexamethylene biguanide hydrochloride [PHMB] (EC -, CAS -)に関して,分類とラベルを調和するための新たな提案が提出された.

6-[C12-18-alkyl-(branched, unsaturated)-2,5-dioxopyrrolidin-1-yl]hexanoic acid (EC -, CAS -)について,分類とラベルを調和させる意向があるニュースを受けた.

Registry of CLP intentions